交通事故で顔に傷が残った場合、どのような賠償を受けられますか?
1 顔に傷が残った場合
交通事故により顔に傷跡が残った場合、傷の程度(長さ、面積)に応じて後遺障害が認定され、これを前提とした賠償を受けることができます。
また、所定の長さ・面積に足りない傷跡であっても、これにより被害者に不利益が生じると認められた場合も、賠償を受けることができる場合があります。
2 後遺障害認定の基準
以下のような基準があり、記載の後遺障害等級に該当します。
⑴ 外貌(顔)に著しい醜状を残すもの(後遺障害等級7級)
鶏卵大面以上の瘢痕または10円銅貨大以上の組織陥没
⑵ 外貌に相当程度の醜状を残すもの(後遺障害等級11級)
長さ5センチメートル上の線条痕で、人目につく程度以上のもの。
「人目につく」ことが条件なので、眉毛などに隠れる部分は後遺障害認定の対象外となります。
⑶ 外貌に醜状を残すもの(後遺障害等級12級)
10円銅貨大以上の瘢痕または長さ3センチメートル以上の線条痕
3 上記に該当した場合の賠償額
⑴ 慰謝料について
具体的な事案の内容により異なりますが、大まかな目安として、裁判所で判決となった場合、7級が1000万円、11級が420万円、12級が290万円とされています。
⑵ 逸失利益について
逸失利益は、後遺障害により労働能力が低下し、その結果、労働による収入が減少したことに対する賠償となります。
「労働による収入がある」ことが前提なので、高齢者などのように就労していない方については賠償の対象外となります。
また、「収入が減少したこと」も賠償の前提なので、後遺障害があっても収入が減少しない場合も、逸失利益に対する賠償が認められないことがあります。
顔の傷跡の場合、一般的には、労働(身体動作)自体には影響を及ぼさないことが多いため、裁判では、逸失利益を否定する代わりに、慰謝料額を上記⑴の目安よりも増額して対応することがあります。
⑶ 自賠責保険からの支払
損害(慰謝料及び逸失利益)の一部として支払われます。
支払額は、7級で1051万円、11級で331万円、12級で224万円となっています。
4 後遺障害として認定されるための手続き
所定の後遺障害診断書を医師に作成してもらい、これを相手方の任意保険会社に提出するか、加害者の加入する自動車賠償責任保険に提出することが必要となります。
また、自転車と歩行者との衝突事故のように、自動車賠償責任保険の適用のない事故の場合でも、後遺障害診断書を相手方が加入する任意保険会社に提出することで、後遺障害が認定されることがあります。
5 傷跡が残ったが、上記2の後遺障害の認定基準に達しない場合
傷の長さが3センチメートルではなく2センチメートルにとどまった場合でも、これが被害者に不利益を与えていることが明らかである場合、慰謝料額を0円とするのではなく、290万円よりも少ない100万円の範囲で認めるなどの対応がされる場合があります。
後遺障害の認定及び之に基づく賠償請求は、いろいろ難しい問題がありますので、専門家である弁護士にご相談ください。
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